本はあした,どうあるべきか,考えたい。
quote:英国での,視覚障害者に7500万冊以上のオーディオブックを提供するサービスは,70回目の誕生日を迎えている。英国視覚障害者協会(RNIB)のこのサービスは,1920年代にLPレコードで始まり,現在はCDで毎年200万冊が刊行されている。このトーキングブック・サービスは,第一次大戦が始まりといわれる。戦場で盲目になった人たちが,点字を学ぶのはとても難しいことだった。RNIBは1926年にLPレコードで実験を始めた。LPレコードが音楽業界で扱われるようになったのは,RNIBのおかげもあった。しかし発売は1930年代になり,1935年11月7日にふたつのタイトルが発売された。1960年にはカセットテープによるトーキングブック・プレイヤーが市場に出た。現在,トーキングブックひとつには2500ポンドのコストがかかり,レコーディングに5日間かかる。
何度か,公立の図書館で小説などの朗読を録音したカセットテープが陳列されて貸し出されているのをみたことがある。だが,そんなにたくさんの種類があるわけでなく,実際に借りていく人をみたこともない。本屋で,そのようなレコード,カセットテープ,CDが売られているのもあまりみたことがない。ぃゃ,カセットが売られていたことはあったかもしれないけど,視覚障害者のためにひとつのサービスとして根付いてはいないと思う。そんな社会のなかにいると,年間200万冊ものトーキングブックが発売されているのは素晴らしいことと思えてしまう。
機械によって自動的に文字を読み上げることができれば,このサービスはより普及するかもしれないが,日本語ではそれはかなり難しい。iTMS(iTunes ミュージックストア)では,日本でもオーディオブックのカテゴリーがあるが,まだまだ本当に商売として成り立つほどの数の本があるとは思えない。しかもよくよくみると,オーディオブックはドラマCDとか落語とかばかりで,普通に発売されている本の朗読版なんてほとんどない。残念なことだ。あえて云えば,本はもう,本屋で売るものではなく,全文をネットワーク上で利用できるようなカタチに姿を変えるときにきている。そのときにオーディオとして発売するのも,iPodなどがこれだけ売れているいまなら,ユーザーにフィットするカタチだと思う。結果的に,視覚障害者もそれを利用できるようになるのだから,望ましい未来のひとつだと思われるが。
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